※訂正:序盤の女性の比率に間違いがあります。コメント欄でご指摘頂いた通り、リーグ全体とJ1のみのデータを一緒にみていました。リーグ全体の数に合わせると、1試合の女性の平均観客動員数は5418人(2004年)→4711(2010年)で約700人の減少になります。お騒がせしてすみません。
2011年のJリーグ平均観客動員数が落ち込んでいる。その原因を先の東日本大震災に求める意見は多い。
「生活することが何より重要だから、娯楽は二の次」
「自粛ムードだから」
だがこれらの意見、僕にはずっと違和感がある。震災により来れなくなった人を想像して責任を帰するよりも、やることがあるんじゃないの?
Jリーグは年間のべ900万人の観客動員数を誇る日本を代表するプロスポーツだが、Jリーグが公表している観戦者調査によると、1人あたりの平均観戦頻度は12〜14回ととても高い。それを考慮すると、年間60〜70万人ほどしかスタジアム観戦はしていないことになる。日本にいる残りの1億2700万人は、年間に1度もJリーグをスタジアムで観ていないわけだ。もちろんスタジアムは収容人数が限られており、年間数千万人がスタジアム観戦経験を持つことは制度上あり得ない。しかし、これだけ多くの人が通常の状態でもJリーグ未観戦なのだ。震災という自然現象に観客動員数を左右されている場合ではないのでは?
僕は、Jリーグの観戦者調査を眺めていて、女性の比率が減少しつつあることに気がついた。2004年の1試合平均観客動員数は18965人。そのうち42.3%は女性であった。女性の観客動員数は8022人となる。対して2010年はどうか。1試合平均観客動員数は18428人、そのうち女性は38.5%。女性の観客動員数は7094人。6年間で、女性の数は1試合に1000人も減っている。
女性が大幅に減少する理由は何があるのだろう。もともとスポーツ観戦は男性が多い。世界のサッカーリーグを見渡しても、Jリーグの女性観客の比率はとても高い。そのJリーグから女性が減少している事実を、もっと深く検討していくべきではないだろうか。
Jリーグは2010年に女性モデルを起用して特に若い女性の増加を狙ったが、特に効果はないようだ。Jリーグの行っているPRは若い女性に届いていない、もしくは伝えるべき魅力がとてもズレている。若い女性は自由時間に何を求めているのか。若い女性がスタジアム観戦でなく、他の活動を選ぶ理由は何か。スタジアム観戦が好きな女性が感じている魅力は、スタジアム観戦をしたことのない女性に的確に認識されているのか。それを明らかにするために、スタジアム観戦経験に違いのある3人の女性にインタビューを行った。
【1】Kさん(都内大学3年生、スタジアム観戦歴5年、ジェフ千葉サポーター)
【2】Iさん(都内大学3年生、プロ野球観戦好き、Jリーグ観戦歴2回)
【3】Nさん(都内大学2年生、スポーツ観戦ほぼ無し)
・ Jリーグのスタジアムにはどういった人が集まっているイメージがある?
K「サポーターがほとんどじゃないですかね。ユニフォームとかよりも、サポートするって自覚を持った人。精神的なサポーターが多いんじゃないですかね。」
I「幅広いから一概に言えないけど、皆何かしらのきっかけがあって、サッカーに興味を持っている人が来ている感じ。」
N「スポーツよっぽど好きな人なんだろうなあって。高校の時運動部でしたっていう人たちが行く感じ。女性でスポーツについて話す人が周りにいないから、女性はとても少ないイメージ。」
・ スタジアム観戦の魅力はどういうところにあると思う?
K「ライブ感、お祭りの雰囲気。非日常空間に自分がいる感じが魅力。」
I「ワーッてした雰囲気は良い。」
N「盛り上がりとか、雰囲気を楽しみに行く。友達と一緒に楽しむ。私だったら皆でテレビを観ることでそれを代替できる気がするけれど。」
・ スタジアム観戦のつまらなさはどういうところにあると思う?
K「応援してるチームが弱い。でもそれくらい。」
I「ゲームが膠着してる時って、なんであんなにつまんないんだろうね。海外のリーグの選手のハッとさせられるようなプレーはJリーグではなかった。あと、選手を知らないから、誰がどう活躍しても分からない。特に走り回っているから、なおさら。」
N「今どういう流れになってるのか分からない。ルールは教えてもらえれば済むけど、それだけじゃ分からないところが分からないと面白くないよね。でも、今の生活をしてたんじゃずっと分からないだろうなあ。誰かに連れて行ってもらって、説明してもらうことでもないと。テレビで実況やってても分からない。置いてかれている感じがするのがつまらないな。」
・ 自由時間はどんなことをして過ごしている?
K「ライブに行く、ショッピング、散歩、カラオケ、友達と美味しいご飯、楽器を弾く、テレビを観る、かな。自由時間の中ではサッカー観戦が優先になってます。」
I「演劇や舞台を観る、野球を観に行く、旅行、友達と飲む、ショッピング、ネットサーフィン。学業が忙しくて、自由時間は土日のどちらかくらいしか取れない。」
N「カラオケ、美味しいご飯、寝る、フラフラと散歩、本を読む。お祭りがやってたら行きたくなります。」
・ 自由時間の活動には何を求めている?
K「音楽ライブが好きなんですけど、ライブに行くのとスタジアムに行くのは同じだと思う。それぞれ音楽を聴く、サッカーを観るってメインの目的があって、それに付随する目的がある。美味しいご飯を食べられたり、新しい土地に行けることであったり、アーティストと直接握手することだったり。電車や飛行機に乗ったりして、初めて行く土地を歩くのも目的になっています。家でDVDを観るのでは、これらの付随する目的は得られませんよね。スタジアム観戦も同じで、5年のうち3年は負け越してるのにスタジアムに行く理由は『フクアリ』(ジェフ千葉のホームスタジアムの略称)だから。付随する色んな楽しい目的のためにスタジアムに行っている、ってのが正直なところです。ジェフ千葉にはそういう人は多いんじゃないかな。」
I「自分が持ってないものを持っている人を見るのが好き。舞台をやっていたことがあるから、観ると『私も頑張らなきゃ』と思う。学業での研究が苦しいので、それ以外には別の世界に行けるようなのを求めているのかな。」
N「ストレスの発散を求めているのかな。今の自由時間の過ごし方で、今週も頑張るかーくらいの元気は得られていると思う。学術サークルに所属していて勉強もしたいと思うので、勉強も自由時間に入るかも。」
・ どうしたら、若い女性はJリーグのスタジアムに行くようになると思う?
K「露出度が重要なのかな。社会的にもイケメンで通りそうな選手をananみたいなファッション雑誌に露出させれば若い女性は気になると思う。よくPRもやっているっていうけど、やっていることを知られていなければ意味がないし。サッカー以外のところでの露出が効果があるんじゃないかな。どんなにJリーグで活躍しても、若い女性の人目には触れないじゃないですか。」
I「阪神の藤川球児選手が『良い試合をすることが一番のファンサービスじゃないか』と言ったことがある。良い試合をするには良い選手、良いコーチ…といった風に『良い』を積み重ねていく必要があるけれど、Jリーグはその『良い』の積み重ねが途中なんじゃないかな。サッカーはどんな選手がどこにいるか全然分からないから、良い選手がいるということを知らせることができれば行く人が出てくるのでは。それと、1人で行ったとしても楽しめる自信が無い。野球はスタジアムでの過ごし方、いつどこで何を観るといったことを分かっているけれど、サッカーは分からないので。女の子が多いからといって行くわけではないと思う。活躍できて、ファンサービスもできる人間的に魅力あるカッコいい選手がいればいいかな。今はネットで家にいながらタダで面白いものを見れるわけで、それに比べるとスタジアムは、メイクして、服を選んで、お金を払って、時間をかけて行くほどの価値があることかなあ、とも思うね。」
N「チケットが3000円から5000円くらいと高く、スタジアムも遠いイメージがある。散歩などお金のあまりかからないことが好きなので、ハードルが高く感じる。ファッション雑誌はほとんど読みません。お祭りが好きだから、楽しそうなお祭りがあると感じれば行くかも。観客層がイメージできないので、どんな服装でどんな女の子が観戦しているのかイメージできればスタジアム観戦に対する見方が変わるかも。まとめると、スポーツにはそれほど興味が持てないので、それ以外が面白いんだよっていう提案をしてくれたら行くかも。(「旅行やグルメとか?」)そう!旅行をすると現地で何をしようか結構迷ってしまって、その時にご当地グルメも食べられてピクニック気分で行けるお祭りがあると知ったら行くと思う。」
まず指摘したいのは、スタジアム観戦経験の少ない人ほど、どういう人がスタジアムに行っているのかのイメージと現実との間にズレを感じたということだ。数万人が集まるイベントなのだから同様の経歴、特長を持つ集団ではあり得ないのだが、スポーツの特殊性か、スポーツ経験者で、男性が多いという答えがあった。実際はスポーツ未経験者も多くいるように見受けられるし、10人に4人は女性である。それを周知させることは重要だろうか。
また、スポーツイベントがもたらす「お祭り感」については3人とも共通した見解を持っていた。現地でしか味わえないものがある、と皆が感じている。これはスポーツイベントが持つ武器といっていいだろう。自由時間の過ごし方も、お祭りなどの非日常空間に対する意識は高かった。お祭りに行きたいと感じる時にスタジアム観戦を提案できるかどうか、議論されるべきであろう。
以上を踏まえて質問した、どうしたら若い女性がJリーグのスタジアムに行くようになるかのアイデアについて特筆すべきなのは、3人とも「知らない」「知る術がない」という状態に対して触れていることだ。その中で僕は、Jリーグの楽しみ方のガイドが不足していることを感じた。スタジアムに観戦に訪れる人の多くはいわゆるコアな「サポーター」ではなくごく普通の人々であることが知られていないのは致命的だ。Jリーグとはどういったリーグで、どのような人が観に来ていて、こうした楽しみ方があります、といったガイドが必要である。Jリーグのスタジアム観戦好きなら、観光気分で観戦旅行プランを立てることや、スタジアムグルメを味わう楽しさがスタジアム観戦動機の少なからぬ部分を占めていることを知っているだろう。それをウェブサイト等でPRするのだ。Kさんの話す通り、Jリーグでどれほど選手が活躍しても、大半の女性の目には触れることがない。Jリーグは若い女性集客のためには、ピッチで行われるプレー以外の面を魅力として露出させるべきであり、その有効な案として、旅行、グルメ、ピクニックなどが挙げられる。スタジアム観戦に今まで興味のなかった層に向けて、観戦ガイドを提供することだ。
そうして知られた状態になって初めて、Jリーグのスタジアム観戦はその他の自由時間の過ごし方と同列に並ぶことができる。そこから先の集客の責任は、各クラブに委ねられていくはずだ。6年間で減少してしまった1000人の、いやそれ以上の数の女性たちがスタジアムを訪れることが、Jリーグの観客動員数が再び上昇に転じるためのカギだと感じている。
ツイート
興味深く読ませていただきました。
返信削除帰属意識が低く、一過性の流行を渡り歩く傾向が強い
(=リピーターに極めてなり難い)
若い女性層をターゲットにする必要性はないと当方は考えておりますが、
いかがでしょう?
また、現在Jリーグがとっている、地域密着・ファミリー層への浸透を目指す
方向性への評価も読みたいです。
>匿名さん
返信削除コメントありがとうございます!初コメントでして、とても嬉しいです。
御返信の前にまず僕の至らなさを謝らなければならないのですが、
この記事は「女性」と「若い女性層」を混同して使ってしまっており
いろいろと不備が出ている気がするので、
僕がこの記事に重ねて意見することはひとまず置こうと思います。
もうちょっと勉強してから書き直します!
その上で、若い女性層をターゲットにする必要はないというご意見は理解できます。
特に一過性の流行を招く行為は過去の経験からも慎重になるべきだと思います。
ただ、僕はインタビュー前に「若い女性にもアプローチはして当然なんじゃないの」
「Jリーグって全年齢・全方面的にお客さんを集めるものじゃないのかな」
と感じていました。
「若い女性にもアプローチして当然、だけどそれは決して重点的にではない」という感じですかね。
実際にレディースシートの販売やJリーグ特命PR部のユッキーナの例からも、若い女性に来てほしいという策が実施されていることは分かります。
その方策を改善していくことは決して間違いではないと思います。
戦略・戦術でいうと、女性を増やすアプローチはもちろん戦術の範疇にあります。
今は女性を増やすアプローチをいくつかしてるけどあんまり成功していない、その改善策を考えることは重要だよねというもので
地域密着に反するとか、Jリーグの戦略の部分には触れることがないと思っています。
Jリーグの方向性を評価することは、確かに大きく時間をとって書いてみたいことですねえ。
僕は決して間違っていない、むしろ時代の先を行って問題を解決しようとする姿勢が素晴らしいと思うので
好評価をしてしまうと思うのですが。
長くなりましてすみません!
>audrey1967さん
返信削除コメントありがとうございます!
そしてご指摘に本当に感謝致します。確かに仰る通り、男女比率はJリーグ全体の数字でした。
僕も確認してみましたが、audrey1967さんのご指摘する数字等に間違いはないかと思います。
改めて調べ直します!次は今回でごっちゃになっていた年齢層でも区切ってみたいなと考えていましたので、
それを加えて修正するつもりです。
数字をみて掘り下げるのは確かに面白いです。
これによってより精確に課題を発見できることは沢山ありますし。
Jリーグが公開してくれていることにとても感謝しています。
Hello mr.mitonista、first of all sorry for my abruptness. i'm a football writer from hong kong's u-soccer.com. good to see your article, it's very interesting to talk about female football fans.
返信削除i think this case is also fit to hong kong football, so i want to use a part of your interview to write a article about the new season of hong kong football league.
may i have your permission to allow me to use your interview? thank you very much
サポティスタに転載され芸スポにもスレがたちました
返信削除女性が減ってるという印象は訂正しても消えないでしょう
Jリーグへのイメージダウンは避けられない
30万人も増えてるのに減ったと捏造されるのは相当キツイです
1人増やすのにどれだけの時間と労力が必要だろうか
あなたの記事がJリーグを滅ぼします
反省してください
そしてJリーグを愛してあげてください
Jリーグに関わる全ての人間の努力を無にしちゃった責任は大きいです
最悪だなぁあんた
返信削除しっかりしてくれよ全く
Hi, ナル-san. Thank you for your comment.
返信削除Of course OK! But I'd like you to pay your attention.
I wrote 'female are decreasing about 1000 from 2004 to 2010.' But I took a mistake when I counted. In fact, It was about 700.
You know, would you mind if I ask you to translate your article(or summary) into English? Because I can't read Cantonese and Mandarin Chinese yet! :)
I'm looking forward to reading your article about female Hong kong football fans.
プレー以外に魅力を求めろですと?そうまでしなきゃ
返信削除いけないなら、サッカーなんて滅びてもいいです。じゃあ、逆におたずねしますけど、世の中全てが女性に合わせなければならないような昨今の風潮については、どうお考えでしょうか?
しかし、英語の書き込みにはすぐご返答ですか?なにかにつけてつられやすいご自身のことについても、もう少しお考えになられては如何でしょうか。
>匿名さん
返信削除コメント頂きありがとうございます。
僕は女性の総入場者数や2009までの平均観客動員数が増えたことは認識してます。ただ平均観客動員数では女性は1試合に約700人減っているというのは事実で、記事の展開とあわせても捏造ではありません。総入場者数に僕は触れていませんので。
展開として、「男性も女性も総入場者数は増えている」「ただ1試合平均観客動員数でみると女性は減っている計算になる」「女性が減ることの是非」「その後〜」とすべきでしたね。これでしたら総入場者数と1試合平均観客動員数の差異が明確になり、皆さんを混乱させてしまうことはなかったはずです。すみません。
サポティスタと芸スポに取り上げられはしたようなのですが
訪問者数をみるとここまで来て頂いたのは実際には大人数ということはなく、なんといいますか僕の記事とは関係ない感じで進んでしまっています。もっと早く訂正すべきだったのは反省してます。
>匿名さん
返信削除コメントありがとうございます。
すみません。。
もっとしっかりします。
>匿名さん
返信削除コメント頂きありがとうございます。
プレー以外の魅力を高める努力は全てのJクラブどころか世界中のリーグやスポーツがしていますので、そうまでしなきゃと表現される理由は分かりません。飲食物の拡充やイベント集客の必要性も皆無ということでしょうか。もはやスタジアムがいらない感じになります。
「世の中全てが女性に合わせなければならないような昨今の風潮」とはそれ自体の存在が疑わしく思うので、何とも言えません。今が女性優位社会とも思えませんし、風潮の具体例を頂きたく思います。レディースデーや女性専用車両でしょうか?
たとえば男性のみのJリーグにするんだという主張も結構だと思います。または8:2の比率がいい、なども。問題はその実現方法で、そう主張される場合は今4割いる女性からもたらされるクラブの収入が減少することを想定して話すべきです。それを補って余りある男性の集客案やその他の収入源が提示できなければ、女性比率を減らす云々の議論は空を切るだけです。
英語のコメントに特段早く対応できたわけでもありませんが、記事を引用されるとのことで僕に間違いがあることを知らせたかったですね。
もともと男性の観客の多いところに女性を無理やり増やそうとしても結果的にコアなサポーターに影響が出るのでは・・・、なぜかというとやはり男性と女性の感覚の違いがありますし・・・、世界的にトップクラスのリーグはどこも男性客が多い具体的には応えられませんがやはり女性向けにしてうまくいくコンテンツ、そうじゃないコンテンツがあってサッカーの場合は後者なのかな、・・・と個人的には思います、あくまで主観的な意見ですのでそうは感じない、と感じられるのならそれはそれで結構ですけどね。
返信削除何年か前のJリーグのCM「僕のヒーローは、このまちにいる」はちょっと感動した。そんな感じで女性サポーターを意識した宣伝をすればいいのでは? アダッチーもいいけどね
返信削除