2011/08/18

女の子とJリーグ




※訂正:序盤の女性の比率に間違いがあります。コメント欄でご指摘頂いた通り、リーグ全体とJ1のみのデータを一緒にみていました。リーグ全体の数に合わせると、1試合の女性の平均観客動員数は5418人(2004年)→4711(2010年)で約700人の減少になります。お騒がせしてすみません。


2011年のJリーグ平均観客動員数が落ち込んでいる。その原因を先の東日本大震災に求める意見は多い。
「生活することが何より重要だから、娯楽は二の次」
「自粛ムードだから」
だがこれらの意見、僕にはずっと違和感がある。震災により来れなくなった人を想像して責任を帰するよりも、やることがあるんじゃないの?

Jリーグは年間のべ900万人の観客動員数を誇る日本を代表するプロスポーツだが、Jリーグが公表している観戦者調査によると、1人あたりの平均観戦頻度は1214回ととても高い。それを考慮すると、年間6070万人ほどしかスタジアム観戦はしていないことになる。日本にいる残りの12700万人は、年間に1度もJリーグをスタジアムで観ていないわけだ。もちろんスタジアムは収容人数が限られており、年間数千万人がスタジアム観戦経験を持つことは制度上あり得ない。しかし、これだけ多くの人が通常の状態でもJリーグ未観戦なのだ。震災という自然現象に観客動員数を左右されている場合ではないのでは?

僕は、Jリーグの観戦者調査を眺めていて、女性の比率が減少しつつあることに気がついた。2004年の1試合平均観客動員数は18965人。そのうち42.3%は女性であった。女性の観客動員数は8022人となる。対して2010年はどうか。1試合平均観客動員数は18428人、そのうち女性は38.5%。女性の観客動員数は7094人。6年間で、女性の数は1試合に1000人も減っている。

女性が大幅に減少する理由は何があるのだろう。もともとスポーツ観戦は男性が多い。世界のサッカーリーグを見渡しても、Jリーグの女性観客の比率はとても高い。そのJリーグから女性が減少している事実を、もっと深く検討していくべきではないだろうか。

Jリーグは2010年に女性モデルを起用して特に若い女性の増加を狙ったが、特に効果はないようだ。Jリーグの行っているPRは若い女性に届いていない、もしくは伝えるべき魅力がとてもズレている。若い女性は自由時間に何を求めているのか。若い女性がスタジアム観戦でなく、他の活動を選ぶ理由は何か。スタジアム観戦が好きな女性が感じている魅力は、スタジアム観戦をしたことのない女性に的確に認識されているのか。それを明らかにするために、スタジアム観戦経験に違いのある3人の女性にインタビューを行った。

1Kさん(都内大学3年生、スタジアム観戦歴5年、ジェフ千葉サポーター)
2Iさん(都内大学3年生、プロ野球観戦好き、Jリーグ観戦歴2)
3Nさん(都内大学2年生、スポーツ観戦ほぼ無し)


  Jリーグのスタジアムにはどういった人が集まっているイメージがある?
K「サポーターがほとんどじゃないですかね。ユニフォームとかよりも、サポートするって自覚を持った人。精神的なサポーターが多いんじゃないですかね。」
I「幅広いから一概に言えないけど、皆何かしらのきっかけがあって、サッカーに興味を持っている人が来ている感じ。」
N「スポーツよっぽど好きな人なんだろうなあって。高校の時運動部でしたっていう人たちが行く感じ。女性でスポーツについて話す人が周りにいないから、女性はとても少ないイメージ。」

  スタジアム観戦の魅力はどういうところにあると思う?
K「ライブ感、お祭りの雰囲気。非日常空間に自分がいる感じが魅力。」
I「ワーッてした雰囲気は良い。」
N「盛り上がりとか、雰囲気を楽しみに行く。友達と一緒に楽しむ。私だったら皆でテレビを観ることでそれを代替できる気がするけれど。」

  スタジアム観戦のつまらなさはどういうところにあると思う?
K「応援してるチームが弱い。でもそれくらい。」
I「ゲームが膠着してる時って、なんであんなにつまんないんだろうね。海外のリーグの選手のハッとさせられるようなプレーはJリーグではなかった。あと、選手を知らないから、誰がどう活躍しても分からない。特に走り回っているから、なおさら。」
N「今どういう流れになってるのか分からない。ルールは教えてもらえれば済むけど、それだけじゃ分からないところが分からないと面白くないよね。でも、今の生活をしてたんじゃずっと分からないだろうなあ。誰かに連れて行ってもらって、説明してもらうことでもないと。テレビで実況やってても分からない。置いてかれている感じがするのがつまらないな。」

  自由時間はどんなことをして過ごしている?
K「ライブに行く、ショッピング、散歩、カラオケ、友達と美味しいご飯、楽器を弾く、テレビを観る、かな。自由時間の中ではサッカー観戦が優先になってます。」
I「演劇や舞台を観る、野球を観に行く、旅行、友達と飲む、ショッピング、ネットサーフィン。学業が忙しくて、自由時間は土日のどちらかくらいしか取れない。」
N「カラオケ、美味しいご飯、寝る、フラフラと散歩、本を読む。お祭りがやってたら行きたくなります。」

  自由時間の活動には何を求めている?
K「音楽ライブが好きなんですけど、ライブに行くのとスタジアムに行くのは同じだと思う。それぞれ音楽を聴く、サッカーを観るってメインの目的があって、それに付随する目的がある。美味しいご飯を食べられたり、新しい土地に行けることであったり、アーティストと直接握手することだったり。電車や飛行機に乗ったりして、初めて行く土地を歩くのも目的になっています。家でDVDを観るのでは、これらの付随する目的は得られませんよね。スタジアム観戦も同じで、5年のうち3年は負け越してるのにスタジアムに行く理由は『フクアリ』(ジェフ千葉のホームスタジアムの略称)だから。付随する色んな楽しい目的のためにスタジアムに行っている、ってのが正直なところです。ジェフ千葉にはそういう人は多いんじゃないかな。」
I「自分が持ってないものを持っている人を見るのが好き。舞台をやっていたことがあるから、観ると『私も頑張らなきゃ』と思う。学業での研究が苦しいので、それ以外には別の世界に行けるようなのを求めているのかな。」
N「ストレスの発散を求めているのかな。今の自由時間の過ごし方で、今週も頑張るかーくらいの元気は得られていると思う。学術サークルに所属していて勉強もしたいと思うので、勉強も自由時間に入るかも。」

  どうしたら、若い女性はJリーグのスタジアムに行くようになると思う?
K「露出度が重要なのかな。社会的にもイケメンで通りそうな選手をananみたいなファッション雑誌に露出させれば若い女性は気になると思う。よくPRもやっているっていうけど、やっていることを知られていなければ意味がないし。サッカー以外のところでの露出が効果があるんじゃないかな。どんなにJリーグで活躍しても、若い女性の人目には触れないじゃないですか。」
I「阪神の藤川球児選手が『良い試合をすることが一番のファンサービスじゃないか』と言ったことがある。良い試合をするには良い選手、良いコーチ…といった風に『良い』を積み重ねていく必要があるけれど、Jリーグはその『良い』の積み重ねが途中なんじゃないかな。サッカーはどんな選手がどこにいるか全然分からないから、良い選手がいるということを知らせることができれば行く人が出てくるのでは。それと、1人で行ったとしても楽しめる自信が無い。野球はスタジアムでの過ごし方、いつどこで何を観るといったことを分かっているけれど、サッカーは分からないので。女の子が多いからといって行くわけではないと思う。活躍できて、ファンサービスもできる人間的に魅力あるカッコいい選手がいればいいかな。今はネットで家にいながらタダで面白いものを見れるわけで、それに比べるとスタジアムは、メイクして、服を選んで、お金を払って、時間をかけて行くほどの価値があることかなあ、とも思うね。」
N「チケットが3000円から5000円くらいと高く、スタジアムも遠いイメージがある。散歩などお金のあまりかからないことが好きなので、ハードルが高く感じる。ファッション雑誌はほとんど読みません。お祭りが好きだから、楽しそうなお祭りがあると感じれば行くかも。観客層がイメージできないので、どんな服装でどんな女の子が観戦しているのかイメージできればスタジアム観戦に対する見方が変わるかも。まとめると、スポーツにはそれほど興味が持てないので、それ以外が面白いんだよっていう提案をしてくれたら行くかも。(「旅行やグルメとか?」)そう!旅行をすると現地で何をしようか結構迷ってしまって、その時にご当地グルメも食べられてピクニック気分で行けるお祭りがあると知ったら行くと思う。」


まず指摘したいのは、スタジアム観戦経験の少ない人ほど、どういう人がスタジアムに行っているのかのイメージと現実との間にズレを感じたということだ。数万人が集まるイベントなのだから同様の経歴、特長を持つ集団ではあり得ないのだが、スポーツの特殊性か、スポーツ経験者で、男性が多いという答えがあった。実際はスポーツ未経験者も多くいるように見受けられるし、10人に4人は女性である。それを周知させることは重要だろうか。

また、スポーツイベントがもたらす「お祭り感」については3人とも共通した見解を持っていた。現地でしか味わえないものがある、と皆が感じている。これはスポーツイベントが持つ武器といっていいだろう。自由時間の過ごし方も、お祭りなどの非日常空間に対する意識は高かった。お祭りに行きたいと感じる時にスタジアム観戦を提案できるかどうか、議論されるべきであろう。

以上を踏まえて質問した、どうしたら若い女性がJリーグのスタジアムに行くようになるかのアイデアについて特筆すべきなのは、3人とも「知らない」「知る術がない」という状態に対して触れていることだ。その中で僕は、Jリーグの楽しみ方のガイドが不足していることを感じた。スタジアムに観戦に訪れる人の多くはいわゆるコアな「サポーター」ではなくごく普通の人々であることが知られていないのは致命的だ。Jリーグとはどういったリーグで、どのような人が観に来ていて、こうした楽しみ方があります、といったガイドが必要である。Jリーグのスタジアム観戦好きなら、観光気分で観戦旅行プランを立てることや、スタジアムグルメを味わう楽しさがスタジアム観戦動機の少なからぬ部分を占めていることを知っているだろう。それをウェブサイト等でPRするのだ。Kさんの話す通り、Jリーグでどれほど選手が活躍しても、大半の女性の目には触れることがない。Jリーグは若い女性集客のためには、ピッチで行われるプレー以外の面を魅力として露出させるべきであり、その有効な案として、旅行、グルメ、ピクニックなどが挙げられる。スタジアム観戦に今まで興味のなかった層に向けて、観戦ガイドを提供することだ。

そうして知られた状態になって初めて、Jリーグのスタジアム観戦はその他の自由時間の過ごし方と同列に並ぶことができる。そこから先の集客の責任は、各クラブに委ねられていくはずだ。6年間で減少してしまった1000人の、いやそれ以上の数の女性たちがスタジアムを訪れることが、Jリーグの観客動員数が再び上昇に転じるためのカギだと感じている。


2011/08/17

Hello World!


初めまして。mitonistaです。


イギリスではロンドンが炎上し、日本ではまんべくんが炎上するいよいよな世紀末に、僕はのんきにもブログを始めました。炎上はさせたくないのでよろしくお願いします。


このブログの中身は、文字通りインサイトとキックについて。
つまり何かの出来事について洞察力を働かせて僕の意見を書くことと、僕の大好きなサッカーについてつらつら書くことになると思います。タイトルは暫定です。変じゃね?と突っ込まれたら「Insight KICKS!」にでもしようかと。どっちが良いかな?



さて、この第1回のエントリでは、ブログを始めようと思った理由を3つ書きます。ホントは108くらいある


1つ。ものごとをもっと深く考えようと思った。
2つ。自分の考えをもっと公表したいと思った。
3つ。自分の考えの不足や誤りを、堂々と修正していく勇気を持ちたいと思った。



1つ。
ものごとをもっと深く考えたいと思った。


深く考えろという状況下でのパフォーマンスを上げたいんじゃなくて、日常の、普段の思考のパフォーマンスを上げたいのです。様々な分野の人が集まる勉強会に参加したりする中で、考えるのは楽しいことだとは最近とても感じている。けれども、もっと“深く”考えるようになるためには、何かしら日常的にトレーニングのようなものが必要なんじゃないだろうか、とも感じていたのです。トレーニングなきサッカープレーヤーは、非常に厳しい見方をすれば、単に状況を頭の中にデータとして入力して、ボールを蹴るという出力をしてるだけなんじゃないか。


「よっしゃ今度から俺もっと深く考えちゃうもんね」っていう内的な決意だけでは不充分だったので、外的な刺激が必要と考えたのです。その点で「文章を書く場所をつくる」というのは非常に良い刺激だと思う。なぜなら、良い文章を書こうとすることは、下準備としてそれ以上に考えることを要求するから。


日常の思考のパフォーマンスを上げるためにブログを書きます。え、文章がヘタで読みにくい?お前ドコ中だよは、発展途上なんだよ!




2つ。
自分の考えをもっと公表したいと思った。


僕は大学生の間、自身の所属する“Sports Of Japan(SOJ)”というサークルで、インタビューをしたり取材をして、それをもとに記事を書き、メルマガ“SEEDS-net”で配信するという活動を結構していました。日本サッカー協会名誉会長の川淵三郎氏にもインタビューができました。もともと本を「この文章きれいだな」「リアル鬼ごっこワロタww」って感じながら読むことは好きだったし、人よりは少しだけ多く「公表」することに対して考えてきたように思う。


でもそれは、「スポーツ」という括りがあった。スポーツ科学を専攻している身だから、情報はいつも読者よりもこちら側が多く握っている。この状況って、人より考えてるとか鋭い洞察力を発揮しているとかはまっっったく関係なくて、持っている情報それだけで評価されている“可能性がある”んじゃないか?僕が誰かに置き換わっても、もしかして何も変わらないのでは?


僕は情報を持つのではなくて、その解釈をうまくしたい。立場や行動量で評価されるというよりも、洞察力で評価されたい。少なくともブログ上ではそう思うので、スポーツ以外のことについても積極的に自分の意見を書いていくことで、その洞察力を審査してもらいたいなーと考えています。

Twitterもこの点では非常に面白いです。レスポンスも多く、早くもらえています。けれども140字の制限や過去ログを辿る面倒臭さの問題があり、5mくらいの距離でキャッチボールしている感があります。10〜100mくらいのキャッチボールができそうなブログと併用することが、良い技術を持った野球選手になっていくためには重要だと思うわけです。




3つ。
自分の考えの不足や誤りを、堂々と修正していく勇気を持ちたいと思った。


例えば、これだっ!と主張したものが誰かによって明確に否定されたとき、あなたはどのように感じるでしょうか?Twitter上の議論とかでも会議でも、なんでもいいです。


恥ずかしい?言ったことを取り消したい?そっとその議論から外れる?
この気持ちは僕にはとてもよく分かります。分かりますっていうか、僕の率直な気持ちです。議論には負けたくないものです。自説の正しさは否定されたくないものです。負けたらもうそれを話題にしてほしくないのです。スポーツと同じです。


でも、それを認めてこそ初めて修正できて、成長できることがありますよね。
『SLAM DUNK』の安西先生は言いました。


「下手糞の 上級者への 道のりは 己が下手さを 知りて一歩目」
スポーツでなら当たり前のように語られる負けへの正直さを、なぜ議論(「考える」という競技)ではほったらかしにしちゃっているのでしょう。議論で勝ちたいなら、同時に負けがあることを認めなければならないはず。負けたら、それを最大限に活かそうと考えるのが僕には自然なのです。成長するための大原則のような気がするのです。これはスポーツをしていた人特有の発想でしょうか?決してそんなことはないはずです。

自分の考えの不足や誤りを認めるのは勇気がいります。それを修正するのはもっと勇気がいります。特にログの残るネットでは「お前この前逆のこと言ってたよな、ホラ」なんて証拠が非常に出しやすい。そうなると議論では負けも同然の様相を呈すので、発言が慎重になり、萎縮するような事態が起こりやすい。

僕は大したことのない人物なので、成長する必要があります。深く考えることのできる人間になりたいので、不足や誤りを指摘される思考の「負け」を最大限に活かそうと思います。僕は堂々と負けますし、堂々と修正をしていく勇気を持ちます。






以上がブログを始めようと思った理由です。ホントはあと105あるんだけど疲れたから後回しにしようまあ、実際にブログが盛り上がることはなかなかないでしょう。僕の一生懸命書いたエントリが、誰か偉い人や知識人によって完全に否定されてたので、それを僕が持ってきて過ちを認めて考え直すといったプロセスを経るのではないかと。


楽しんでやりたいと思います。読んでくれたら嬉しいです。
というか今回ここまで読んでくれている人いたらかなり嬉しいです。