2011/11/17

クアラルンプールから見据えるアジアサッカーの未来。


 


先日行われた2014年ブラジルW杯アジア3次予選で、ともに敵地での戦いではあったものの、日本は北朝鮮に0-1で敗れ、韓国はレバノンに1-2で敗れました。FIFAランキングで言うと、アジア最高の17位のチームが124位に敗れ、31位のチームが146位に敗れているということになります。FIFAランキングの算出方法についての議論は置いておくとして、「アジアの下位チームが急速に強くなってきている」そう感じる方は多いのではないでしょうか。

今回は、日本の目線ではなく、アジア全体の目線からサッカーを記述してみます。



クアラルンプールにあるアジアサッカー連盟を訪問してきました

FIFAという組織のことを知らない人はほとんどいないと思います。試しに80を超える祖母に「フィファって知ってる?」と聞いてみたら「サッカーのワールドカップ」って返ってきた。うん、まったくその通りで、FIFAは国際サッカー連盟といって、4年に1度のあのW杯を主催している組織です。これってすごい知名度と浸透度なんじゃないだろうか?

では、「AFCって知ってる?」と聞くとどうなるか。恐らく何の組織を指すのか分からない人が大半でしょう。「アジアサッカー連盟って知ってる?」という聞き方でも微妙だ。「アジアカップを主催してる」とか「FIFAの下にある組織」と答えられたらその人は立派なサッカーフリーク。ドヤ顔していい。まだAFCは知名度が低いように思います。

けれども、AFCは今後の世界における「発展するアジア」を考える上で、とても注目すべき、非常に面白い組織です。経済が急成長するアジアという地域で、世界で最も愛されているスポーツであるサッカーを扱う組織。まだ情報が不足している面はあれど、僕らはもっとAFCの動向に注目していくと良いと思います。サッカーに興味の無い人も含めて。


僕は早稲田大学で、元日本サッカー協会専務理事の平田竹男先生の研究室に所属しています。その平田先生のご厚意で、9月にマレーシア・クアラルンプールへ行き、アジアサッカー連盟(Asian Football Confederation、以下AFCで統一)を訪問することができました。とても貴重な経験ができたので、そこから学んだことを入れて、AFCやアジアサッカーについてまとめました。

AFCとは、

①アジアならでは、範囲の超広い発展途上の組織
Competition(大会)で稼ぐ
Development(普及・育成)に使う

こんな組織です。





①アジアならでは、範囲の超広い発展途上の組織

僕らが漠然と抱いているアジアのイメージってありますよね。「アジアは広大で、人種のるつぼで、文化も宗教も多様である」という感じ。こうしてみるとアメリカと同じようなイメージですがw

AFCもまさにそんなイメージ通りの組織です。サッカーは世界的にピラミッド型の組織構造をしていて、FIFAという国際統括団体がトップにあり、その下に6つの大陸連盟がある。AFCはその大陸連盟のうちの1つですね。世界中で行われているサッカーの、アジア部門をすべて引き受けているという感じです。ちなみにその6つの大陸連盟のそれぞれ下に日本サッカー協会のような各国の協会が置かれ、AFCには46の国と地域の協会が加盟しています。

さらに言うと、実はAFCは地域別に4つに分けられています。東アジアサッカー連盟(日本や韓国、中国などはここに所属)、南アジアサッカー連盟、西アジアサッカー連盟、ASEANサッカー連盟の4つです。これには多分に政治的な思惑が絡んでくるわけですが、今回は割愛。




そしてこの4連盟、46協会を考えると、AFCは世界で最も広い地域をカバーしている連盟なのです。特に東西に広いことで、パレスチナなどの西の端から東はオーストラリアまで、実に9時間の時差があります。これは他の大陸連盟にはないアジア独特の問題で、そもそもAFCを西25と東21で分割するかーなんて話も出ているそうです。アジアには現在でも40億人もいるわけで、それをサッカーという一つの文化の下に統括するのは大変ですね。






Competition(大会)で稼ぐ

AFCに課せられた主な仕事は、アジア地区におけるサッカー国際大会を開催することです。サッカーには代表チームとクラブチームという2つがありますが、どちらもAFCの管轄です。


代表チーム大会の開催
 
(FIFAランキングとAFC内での順位、2011年11月17日現在)

FIFA AFC内  
FIFA AFC内  
17 1 日本
145 24 トルクメニスタン
20 2 オーストラリア
146 25 レバノン
31 3 韓国
149 26 イエメン
42 4 イラン
151 27 マレーシア
70 5 中国
156 28 香港
73 6 ウズベキスタン
158 29 フィリピン
81 7 ヨルダン
160 30 インド
91 8 イラク
162 31 モルジブ
92 9 カタール
164 32 パレスチナ
96 10 クウェート
166 33 台湾
98 11 サウジアラビア
167 34 モンゴル
101 12 バーレーン
170 35 ミャンマー
103 13 オマーン
173 36 パキスタン
106 14 シリア
176 37 カンボジア
113 15 UAE
177 38 スリランカ
114 16 タイ
181 39 ラオス
124 17 北朝鮮
184 40 アフガニスタン
130 18 タジキスタン
186 41 キルギスタン
134 19 ベトナム
187 42 グアム
139 20 シンガポール
191 43 マカオ
140 21 インドネシア
197 44 ブルネイ
141 22 バングラデシュ
199 45 ブータン
144 23 ネパール
201 46 東ティモール



代表チームでは、これらの大会を開催しています。

  FIFAワールドカップ・アジア地区予選
  AFCアジアカップ
  オリンピック・アジア地区予選
  AFCチャレンジカップ(2006年創設、2年に1度)
  AFC U-19選手権
  AFC U-16選手権
  AFCフットサル選手権
 (※選手権は「チャンピオンシップ」と呼ぶこともある)


上の3つまではみんな良く知っていますよね。現在進行形で行われている2014年ブラジルW杯に向けたアジア地区3次予選(タジキスタン・北朝鮮・ウズベキスタンと争っています)や、1月のアジアカップでの日本代表の劇的な優勝劇は記憶に新しいですね。あれらはAFCが開催しています。FIFAじゃないですよ。

AFCチャレンジカップは、AFCアジアカップに出場できるほど強くない、アジアの下位国のためのアジアカップみたいなものです。AFCに加盟している国の中で、FIFAランキングが下位16位である国に参加資格があります。

女子サッカーももちろんAFCが行うところで、このAFCチャレンジカップのみが女子にはありませんが、その他は男子と同じ大会が開催されています。
ちなみに先日、女子のU-19選手権で日本代表が優勝を収めました。なでしこジャパンのW杯優勝に続いて、女子も今非常に良い流れになっていますね。
Young Nadeshiko set Asian standard

U-19U-16ってなんだかハンパな年齢で分けてるな、と思うかもしれません。これはFIFAが開催するU-20ワールドカップ、U-17ワールドカップという国際大会に合わせたものになっています。各大陸のU-19選手権で良い成績を収めた国が、翌年に「同じメンバーで」U-20ワールドカップに挑むことができる仕組みというわけです。

サッカーの国際組織は、フットサルも行っています。アジアにおいてはイランが異様な強さを誇っており、それに日本やウズベキスタンが挑むという構図になっています。



クラブチーム大会の開催

一方、クラブチームでは、これらの大会を開催しています。

  AFCチャンピオンズリーグ(ACL2003年創設)
  AFCカップ(2004年創設)
  AFCプレジデンツカップ(2005年創設)
  AFCフットサルクラブ選手権


ACLは、アジアにもヨーロッパのチャンピオンズリーグのような最高峰のクラブチームが集いしのぎを削る大会を作ろうとしているもので、Jリーグからは4クラブが出場している大会です。今年は11/5に決勝戦があったのですが、韓国の全北現代モータースとカタールのアルサッドという対戦カードで、日本はベスト16に鹿島アントラーズ、名古屋グランパス、ガンバ大阪、ベスト8にはセレッソ大阪のみだったという残念な結果になっています。クラブチームがアジアで勝てないこと。ここに現在の日本サッカーの大きな課題があると考える人は多いです。

AFCカップとAFCプレジデンツカップは、代表におけるAFCチャレンジカップと同じ構造をしています。ACLに出場できるのは強いクラブチームを持つランキングの上位14カ国で(もちろん日本も入っています)1528位の国々のリーグ戦とカップ戦の優勝クラブつまり28クラブが参加できるのがAFCカップ。29位以下の国々から12カ国を選抜して、その国のリーグの優勝クラブが参加できるのがAFCプレジデンツカップです。日本においてはアジアの大会といえばAFCアジアカップしか見えていませんが、こうした下位の国のための大会もしっかりとあるのです。

ところで、日本のフットサルも発展していると思わせる出来事がありました。今年7月に行われたAFCフットサルクラブ選手権で、名古屋オーシャンズがイランのクラブを破り、初優勝を果たしたのです。日本にフットサルリーグ「Fリーグ」ができて4年目。こうした成果にも目を向けていきたいところです。
Nagoya Oceans crowned champions
http://ja.wikipedia.org/wiki/AFCフットサルクラブ選手権



AFCが“稼げる”大会

さて、この代表とクラブチームの大会を開催・運営することで、AFCはお金を稼いでいます。収入源として主に「チケット収入」「テレビ放映権収入」「スポンサー収入」などが挙げられるでしょう。そうした“稼げる”大会というのは現在はこんなところでしょうか。

代表
FIFAワールドカップ・アジア地区予選
AFCアジアカップ
・オリンピック・アジア地区予選
クラブ
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)

さきのAFCアジアカップ2011のデータがあります。これによると、アジアカップ2011はアジア太平洋地域をはじめ、ヨーロッパ、北アメリカ、さらには北アフリカの80カ国にテレビ放映され、48400万人の視聴者がいたとのこと。こうした莫大な視聴者数を背景に、AFCはチケット収入・テレビ放映権収入・スポンサー収入を獲得しているのですね。
Japan, China, Korea Rep top viewership markets

また、アジアカップ2011の日本vsオーストラリアの決勝戦では、世界最多の51カメラでの中継が行われました。これ自体が凄い意味を持つものではないでしょうが、各放送局のアジアカップへの期待の高さが伺えます。
World-first awaits global television audience

クラブのACLにも大きな期待がかけられていると感じるニュースがありました。アジアカップ2011後の3月に、北アメリカでもACLの放送が始まるというニュースです。アメリカのOne World Sportsというアジアのスポーツにフォーカスした英語の放送局によるもので、ACLを長期的に放送していきたいという意向を示しています。

いくつかのニュースから、これらの大会をより大きくさせることでAFCがお金を稼ごうとしていることがわかります。なかなか額までは調べることができないのですが、どなたかご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひとも情報提供をお願い致します。







Development(普及・育成)に使う


AFCは大会運営によって稼いだお金を、普及・育成に使っています。

これはあまり日本で知られていないところですね(世界的にかもしれませんが)。その理由はおそらく、日本(各国)は国単位で勝手に普及と育成をやっているからだと思います。「日本をサッカー強豪国にしたい。そのための活動が日本の幸福につながる」そう思った日本人の集団が優秀な人材を集め、色々と勉強したのちJリーグを作り、日本国内のサッカー機運を高め、W杯に出て勝ち進んでいく。それをほぼ全て自前で達成しているため、AFCから普及・育成の支援をもらっていこうという発想が内部になかったのでしょう。もちろん、日本が経済的にとても豊かな国であること、その頃にAFCが今ほど大きな組織でなかったことも要因だろうとは思いますが。

しかし、アジアは広大で、発展途上にある国が多数あります。経済的にサッカーの普及が難しい状況にある国も多いのです。そこで、AFCがその事情を汲み取って、適切な支援を行うことでアジアでのサッカーの価値向上を図ろうというのがこのDevelopmentプログラムです。

既に世界的なスポーツと言っていいサッカーですが、まだまだ盛んに行われていない地域は沢山あります。そうしたところにサッカーを根付かせていくことで、市場としてのサッカー圏を広げると同時に、国家間の競争を活発にしアジア地域のサッカーの全体的なレベルを上げて行くという狙いが読み取れます。


AFCDevelopmentプログラムとして5つを挙げています。

Vision Asia
AID 27
Grassroots & Youth
Educational Courses/Seminar
Project Future


Vision Asia

まず、AFCはアジア全体を覆う戦略を策定しています。Vision Asiaとは、簡単にいえば「すべての面においてアジアのサッカーレベルを向上させるためのコンサルティング・プラン」です。いつの日かアジアからW杯優勝国を出すという壮大な目的の下に、2003年に公開されました。

サッカーをピッチの選手たちのように11の要素に分け、それらすべてのレベルを順を追って整備・向上させていくというプランになっています。上の方が整備の優先順位が高いという解釈で良いかと思います。逆に言えば、サッカーの世界的な専門家(当事者)はサッカーをこのように分割して見ていることを示していますね。このような視点で見れば、あなたも今日からサッカー連盟の人です!

Phase 1:各国協会
Phase 2:男子サッカー、レフェリー、指導者、スポーツ医学
Phase 3:グラスルーツ(普及)
Phase 4:マーケティング、メディア、ファン
Phase 5:フットサル、女子サッカー

各国協会からのリクエストに応じて視察団(コンサルタントみたいなものですかね)を派遣、現地調査をした上で、その土地に合った発展プランを作成し、実行させる。そういったプロセスになっているようです。

2008年のタイ・プロジェクトを例に挙げましょう。タイサッカー協会がAFCVision Asiaプログラムを要請し、AFCはそれを受諾。AFCは視察団を現地に派遣(http://www.the-afc.com/jp/vision-thailand/17943 を参照)、どのような環境にサッカーを置いている国か、詳細にレポートします。そしてその後、AFCはタイサッカー協会に向けてワークショップを開催し、タイサッカー全体の発展に向けて共に動き出すという流れです(http://www.the-afc.com/jp/football-development/vision-asia/19597 を参照、視察からワークショップ開催まで4ヶ月かけていますね)。タイの場合、バンコク郊外にあるチョンブリという県でプログラムが実施されましたが、Phase12に関しては良い評価がなされ、Phase3のグラスルーツ(普及)に関するプログラムになりました。結論として、タイにはまず普及・若手育成の評議会がないためにそれを創設し、またその実行部隊がないためその組織も作るということになったようです。2つ目についてはタイの学校教育に着目し、U11からU13のクラス対抗のサッカーリーグ、U11からU13の学校対抗のサッカーリーグの創設を提案し、その運営の支援をしています。お話してくれたAFCの職員の方は「その土地に合った」普及を行うことを何よりも大切にしていると仰っていましたが、その姿勢が垣間見えるプログラムです。
チョンブリでのプログラムは成功を収めたようで、その後タイサッカー協会とAFCはヴィジョン・タイを延長させ、プーケットとコン・カエンという2地域でも新たなプログラムが実行されているようです。

ヴィジョン・タイのレポートの他、様々なプログラムはこちらから見られます。



AID 27

AID27とは、AFCに加盟する協会のうち、経済的にも苦しい下半分の国に対して補助金を供給するプログラムです。その用途はDevelopmentに限られており、
  良いコーチを雇う給料
  教育面を強化するための資金
  スタッフを雇う給料の補助
  ユース年代もしくはU13U14世代の代表の国際大会への参加数を増やす
これらの場合に財政的援助をしようとするものです。

パキスタンの女子サッカー振興の例があります。AID27によりフルタイムで女子サッカー専任のスタッフを雇用することができ、そこから17チームの女子サッカーリーグの創設につながったと書かれています。



Grassroots & Youth

Vision Asiaのプログラムに各国のグラスルーツ普及があるので、それとは別に、国際大会の開催をするものです。

U13U14のフェスティバル(この年代ではCompetitionという競争的な用語でなく、フェスティバルという楽しいお祭りを感じさせる用語を使おうということになっています)を開催しています。男子は5都市、女子は2都市で毎年開催されています。

参考に2010年に行われたU13ガールズフェスティバルの記事を。


Educational Courses/Seminar

そのままです。割愛!w


Project Future

これはアジアから優秀なレフェリー、コーチを輩出しようというエリート教育プログラムで、U25のレフェリー、U30のコーチを集めて様々な経験をさせています。





おまけ:④今後のアジアサッカー論点


さて、AFCが今やっていることをCompetitionDevelopment2方面からまとめてきましたが、それでは僕らは今後、どういったことに注目し、議論を展開していけばいいのでしょうか。最後に論点を提示しようと思います。


・アジアから世界の強豪国を作り上げることと、アジア全体のレベルを上げること、どちらを優先すべきか?

これはAFCからするとジレンマに陥りそうな頭の痛い議題です。基本的な考えとして、サッカーは同じくらい強い相手と切磋琢磨したり、自分よりも強い相手に挑戦することでレベルアップしていくはずです。日本が毎回10-0くらいで圧勝してしまう相手とばかり試合をしていても、自分たちより強いスペインやブラジルを倒せるようになるとは考えないですよね。アジアサッカーの世界におけるプレゼンスを高めるためにはW杯で優勝を争えるくらいのチームを輩出することが欠かせませんが、その有力候補である日本やオーストラリアや韓国がレベルアップしていくための環境を充分に用意できているでしょうか。

日本は1月のアジアカップで韓国、オーストラリアと非常に競争的で良い環境のなか試合をすることができました。ただしそれは、4年に1度のアジアカップで、さらに決勝まで勝ち進むことでやっと得られた環境です。日本が世界の強豪国へと成長するためには、もっと日常的に韓国、オーストラリアクラスの相手と試合をするべきなのではないでしょうか?

逆の観点からいうと、例えば他のアジアの国にとって、日本は「自分よりも強い相手」であり、またとないレベルアップの機会になっています。そうした機会を多数作ることでアジア全体がレベルアップし、競争的になり、それが日本などの強豪国に日常的なレベルアップの機会を与える。確かにそれは充分な説得力があります。しかしそれは遠大な計画で、世界のサッカーのレベルアップのスピードは、それを待ってくれるのでしょうか?

もちろん実際にはどちらか一方の路線を取るということではなく、バランスの問題です。Competitionの新設や出場権をめぐる制度変更から、AFCがこれについて試行錯誤していることが読み取れます。AFCチャレンジカップの創設はアジア下位に競争的な機会を与えてアジア全体のレベルアップを図るものですし、W杯のアジア予選は1次、2次、3次、最終と幾重にも予選を重ねることで予選リーグ内でのレベルを均衡させることができ、同時に強豪国にとっても弱小国との試合数を減らすことができる制度であると言えましょう。

実力差がありすぎる試合をなくすのと、弱小国の試合数の確保と、強い相手とやることでのレベルアップの機会をどのように構成していくか。普段の日本代表を見る目線を少し下げてみると、いろいろと面白いことが考えられます。




先日の北朝鮮は、金正日総書記の意向を主な理由として、2006年ドイツW杯のアジア予選まで、国際試合への参加を極端に減らしていました。そのためFIFAランキングもとても低いものだったのですが、そのドイツW杯アジア予選で最終予選まで残ることができ(大黒のロスタイムでのゴールは記憶に新しいのでは)AFCチャレンジカップに2008年から参加し3位、2010年大会では優勝を果たします。また南アフリカW杯アジア予選を勝ち抜きW杯出場を果たしたのもこの年です。2010年のAFCチャレンジカップ優勝により今年のAFCアジアカップにも出場することもできました。

これらを見ると、北朝鮮代表は競争的な試合をたくさんこなしたことでレベルが上がった、と説明することができるのではないでしょうか。AFCチャレンジカップの創設など、Competitionの整備によって強さが目立ってきた感のあるチームです。こうしたことは、北朝鮮の政治的な一切を置けば、アジア全体のレベルアップとして非常に歓迎すべきことなのだと思います。




すごく長くなりましたが、AFCの大まかな活動を紹介しました。次は今後のアジアにとって大きな柱となっていくであろう、ACLの改革についてなどやりたいですね。AFCの年間予算は40〜50億円で、日本サッカー協会の年間200〜250億円(!)と比べると非常に小さい規模でやりくりしているのですが、ACLについては賞金を増額するなど頑張っているのです。

あとは、ヨーロッパのビッグクラブによるアジアサッカー普及活動との兼ね合いですね。近年はアジアツアーはすっかり恒例になりましたが、そこからさらに発展させて活動を行うクラブも出てきています。


ここまで読んでくれた皆様に感謝!
そして重ねて、貴重な機会を作ってくださった平田先生と、AFC職員の皆様に感謝いたします。


2011/10/13

もし浦和が不調でなく、FC東京が降格していなかったら



通称『もしウラ』が始まります




2011年のJ11試合平均観客動員数は、28節を終えて15,441人。2010年が18,428人だから、1試合に約3,000(2,987)ずつも減っている。
(Jリーグ公式サイト http://www.j-league.or.jp/data/ に基づく)


この要因ってなんだろう?震災の影響?今回は1つ仮説を立てて検証してみる。
すなわちタイトルの「もし浦和が不調でなく、FC東京が降格していなかったら」だ。


この2クラブはともに知名度が高く、観客動員数でも上位である。浦和レッズサポの熱さはよく知られているし、FC東京サポは交通の便の良さからなのか、アウェイの動員力が凄いのだとたまに目にする。アウェイのスタジアムに大挙して押し掛けてはスタジアムグルメを食い尽くしていくとかで、一部では「イナゴ軍団」と呼ばれていたりw

そしてこの2クラブは2011年の今、ともに不調だ。浦和レッズは降格争いを演じてしまっているし、観客動員数がガクンと落ちている。FC東京に至ってはJ1にすらいない。でもこれが彼らの、本来の姿ではないことを期待している。やっぱり人気クラブはいつも強くあってほしいのだ。

「観客激減、Jリーグピンチ」みたいな煽り記事っぽいのが出ると思うが、その前に要因を探ってみるのも一興ではないだろうか。そんな気持ちでちょっと調べてみた。
『浦和レッズが好調で昨年度と同じ観客数を維持できており、FC東京がJ1に残留していたら、観客動員数2,987人減ってのは結構なくなるのでは?震災の影響とか、飽きられたとかじゃないのでは?』





【計算する】

まず、この2クラブの観客として2つのタイプを考えなければならない。すなわちホームゲームでの観客と、アウェイゲームでの観客。

   ホームゲーム

ホームゲームの動員力ならば、Jリーグ公式サイトに載っているものでOKだ。

浦和:
2011年現時点(ホーム13試合消化)の浦和は総動員数422,228人、1試合平均観客動員数は32,479人。2010年の1試合平均観客動員数は39,941(1試合7,462人も減っている計算になる)で、これを2011年現時点に当てはめると総動員数は519,233人と、97,006人増える。

FC東京:
FC東京は今年J1にはいないので、J2から昇格してきたクラブと置き換えて考えるのがいいのでは。昇格組は甲府・福岡・柏だが、2011年の甲府・福岡を合わせた平均観客動員数(11,809+10,004)と、FC東京と同様に降格した2010年の京都・湘南を合わせた平均観客動員数(10,510+11,905)はほぼ同じになっている。そのため柏とFC東京を置き換えて考えることにしよう。柏サポの方、ごめん!

2011年現時点(ホーム14試合消化)の柏は総動員数170,502人、1試合平均観客動員数は12,179人。2010年のFC東京の1試合平均観客動員数は25,112人で、これを2011年の柏の現時点に当てはめると総動員数は351,568人と、181,066人増える。




   アウェイゲーム

アウェイゲームの動員力を測るのはとても難しい。とりあえず考えたのは、対戦クラブのvs浦和、vsFC東京というホームゲームで、その1つ前()のとの観客動員数の差を出し、すべてのクラブでその差を出した後、平均値を出すというもの。これだと1つ前の対戦相手の人気度や結果などに影響を受けてしまうのだが、今のところ他に思いつかなかった。もし何か良いアイディアがあれば教えてほしい。

浦和:
予想はしていたことだが、「イナゴ軍団」FC東京よりも浦和はアウェイ動員力がある。浦和戦の観客動員数は伸びるということを見越して、いくつかのクラブは開催スタジアムを大きいものに変えるほどだ。(仙台、大宮、清水、磐田、名古屋あたり)

浦和のアウェイ動員力は2010年は7,406人、2011年には4,807人と2,599人の差が出ている。これを2011年現時点の浦和のアウェイゲーム15試合にそれぞれ足していくと、38,985人の増加になる。

FC東京:
FC東京の2010年のアウェイ動員力は3,287人であった。降格するほど成績が悪かったこともあるのか、他クラブとの差はそれほどないといえる。スタジアムグルメの消費量はまた別途研究を要するがw

柏には特筆すべきアウェイ動員力がないと仮定して(柏サポ重ねてごめん!)2011年現時点の柏のアウェイゲーム14試合と置き換えてそれぞれ足していくと、46,018人増加する計算になった。




【まとめる】

2010年の観客動員力を維持した浦和は、ホームゲーム13試合で今より97,006人観客を集めている。またアウェイゲーム15試合でも、相手サポか遠征する浦和サポがメインかなどは分からないが、合計で38,985人多く相手の観客動員に貢献する。

また2010年に残留し、観客動員力を維持したFC東京は、昇格してきた柏と申し訳ないが入れ替えさせて頂くと、ホームゲーム14試合で181,066人多く観客を集め、またアウェイゲーム14試合で46,018人多く相手の観客動員に貢献する。

これらを合計すると、363,075人である。


これを28(252試合)終了時のJリーグ総入場者数である3,891,171人に合わせると、4,254,246人。252で割ると、1試合平均観客動員数は、16,882(小数点第1位繰上げ)だ。



『浦和レッズが好調で昨年度と同じ観客数を維持できており、FC東京がJ1に残留していたら、1試合平均観客動員数2,987人減ってのは結構なくなるのでは?』

この仮定での1試合平均観客動員数は16,882人。現在の15,441人に比べ1,441人増え、2010年の18,428人と比べると1546人減ということになる。

これって、結構なくなってると言えるのではないだろうか。確かに縮まったのは半分弱で、1試合に1,546人ずつ減っているのはまた別の要因ということになる。けれども、浦和とFC東京がいつもの調子でいるだけで、ここまで数字が改善されるものか。改めて人気クラブへの依存度の高さを示している、ということでもある。


『震災の影響とか、飽きられたとかじゃないのでは?』

ということで、別の要因は何かあるのだと思う。そんな感じで考えていたら、節ごとの平均観客動員数の推移のグラフを作ってくれた方がいた。@audrey1967さん、ありがとうございます!感謝!


http://p.twipple.jp/ZBL9A
(グラフデータはJリーグ公式サイトhttp://www.j-league.or.jp/ に基づく)


このグラフを見ると、今年の後半戦からはほぼ昨年と同様の観客動員数に回復していることが分かる。大きな差があるのは前半戦で、それは時期から考えると震災なのだろうと思う。

さらに震災の影響として、スケジュールの再編成により平日開催が増加したことが1試合平均観客動員数を大きく減らしている要因であろうことが読み取れる。あとは実感だが、前半戦は全国的に雨の中での開催が多かったように思う。このあたりの影響を含めて、今後ももう少し考えてみたい。


 
うむ、なんかすっきりまとまった!