ネタバレをほぼせずにその作品の魅力を語るというのはとても難しいけれど、このマンガなら語れそうな気がする!
今回は、週刊少年マガジンで連載中の『ベイビーステップ』というテニスマンガについて。超面白いので、みんなコミックス買って読むべきです!って言いたいエントリです。
僕が『ベイビーステップ』を薦める理由は、絵が上手いからではありません。題材のテニスが超カッコいいスポーツだからでもありません。
この作品をみんなに猛烈に読んでほしいのは、今を生きる僕らにとって大切な「現代版の」努力・根性・勝利のモデルになってくれているんじゃないかと思うからです。もっと言ってしまうと、こういう生き方ができれば、何をおいても人生成功するはず。不確実なこの時代に、僕らは主人公のエーちゃんの生き方をちょっと意識して日々を過ごすといいんじゃないかと思うのです。
・自分も頑張ろう!と思えるマンガ。
・挫折レスな人間になろう。
・成長は、一歩一歩を踏み出し続ける姿勢から生まれる。
このあたりの雰囲気を良いほうに感じ取ってもらえたら僕は満足!
マンガの主人公はいつも魅力的です。『ONE PIECE』のルフィしかり、『宇宙兄弟』のムッタしかり、『君に届け』の爽子しかり、
『ベイビーステップ』はとても地味でシンプルな物語構造をしています。エーちゃんがテニスという没頭できるものを見つけ、その周りにある友人やコーチ、練習や試合やなっちゃんを通じて成長していく。それを読者に丁寧に追体験させているという、「成長って楽しいねマンガ」です。テニスシーンには華のあるマンガ的展開が皆無です(それは試合が面白くないことを意味しません。めちゃくちゃアツく、面白いです)。
エーちゃんは何のすごい特殊能力も持っていない、普通の人間です。目は良いんですが身体能力に優れているわけではなく、そもそも高校からテニスを始めた素人なので、技術に秀でているわけでもない。特殊能力が無いというのは、僕ら読者にとても近いキャラクターですね。
けれどもエーちゃんには、最高のメンタリティがあります。スポーツマンガでは考えられないことですが、エーちゃんには作中で「挫折」するシーンがありません。いつもいつもいつも考え続け、実行して、を繰り返している。「PDCAサイクルを超高速で回し続けている人間」といえば、動きの激しい業界で働く人などに魅力が伝わるでしょうか。
僕らは今まで、成長のためには挫折が付き物のように感じていませんでしたか?それが人間には当たり前のもののように感じていないでしょうか?
完璧のように見える『キャプテン翼』の大空翼だってある試合では「ダメだ…勝てない…」とか呟いて跪いたりしていました。これは翼はその時には本気でそう思って呟いているんです。そして読者も。
相手が強すぎて思考停止しているシーンがあり、「ああ…もうダメだ…」と読者に思わせといて、まだだ!って状況が変化したり誰かがアドバイスくれたりがあって、見事復活(成長)!そして勝利!こんな流れ。マンガの展開をドラマチックにするための手法として、マイナスにしてからの大幅プラス転換というのはセオリーですね。『SLAM DUNK』の山王戦のゴリなんかを思い出してもらえるといいかも。
ところがエーちゃんは挫折しない。どれだけやられても思考停止しない。ドラマチック成長のセオリーを基本的に無視しています。この辺は「展開が地味」との評価を受けるかもしれません。
けれどもエーちゃんは一方で僕らに「挫折しなければ成長できないって、遅くね?」って語りかけてくるんです。エーちゃんは負けて落ち込んだりすることはありますが、その落ち込みは次の瞬間には貴重なデータ、急速な成長のための布石にしかなっていないのです。
周りが不気味に思うくらい、エーちゃんは着実に実力を伸ばし続けています。等身大の自分の実力をすべて出し切っては振り返り、修正して次のプレーに臨む。この繰り返しの最先端に彼は立っている。挫折っぽいことを経験しては成長するという、僕らの成長に対する鈍重な考え方を変えてくれる。「遅い遅い。もうそんなんでいい時代じゃないんだよ」って感じに。
これは現代を生きる僕らがとても「こうありたい!」と願うべき態度ではないでしょうか。
僕らが生活している中で、挫折なんかそうそう訪れてくれません。もちろん訪れることはあるし、そこで成長できる人が良いのは当たり前のことですが、成長の度合いを考えるならそれより重要なことは、普段の生活の中でも軽いカベを設定し、どうすれば越えられるかを分析し、越えた喜びを活かして次のカベを設定する。この不断の態度にあると思うんです。
先日内定を頂いた企業の方が、企業をどのように成長させるのかについてこう答えていました。「PDCAサイクルを超高速で回し続ける」と。僕が凄いなあと思う友人もたまたまTwitterで全く同じことを呟いていました。
現代の成長物語は、巨大なカベを一気に乗り越えるよりも、小さくても無数にあるカベをどんどんと突破していくこと、そちらのほうにより重点があるように思います。この2011年を振り返ればよく分かるように、変化の多い時代です。この時代では大きな一歩を踏むことがなかなかにリスクが高いことを感じてしまいます。小さい一歩一歩を無数に踏み出し続けることで、そのリスクも抑えられるのですね。
もちろん、小さい無数のカベを乗り越える最終目的には巨大なカベ(エーちゃんなら、プロのテニス選手になって活躍すること)がある。それは今も昔も変わりません。目的の達成方法として、コツコツ型がスピードを上げたタイプが優位になりつつあるのではないかという思いが、エーちゃんを見ていて沸き上がってくるのです。
エーちゃんの今設定しているカベは全国で優勝することという、端から見たら既にとても高いカベになっています。けれども彼は相変わらず一歩一歩を踏み出し続けているだけです。この安心感ある成長というのが、なんだかんだ言いながらも結局道から大きく外れることができない大多数の人間の、良いモデルになってほしいなと僕は思うのです。もし読むことがあれば、そういう自身の成長についても感じながら楽しんでほしいなと思います。
「幾度となく壁に当たる度に なんとか乗り越えようと全力で考えて その都度前を向いて立ち上がる君は 誰よりもこの試合を楽しんでるように見えた」(14巻P.126より)
これはエーちゃんが負けた試合で掛けられた言葉。
試合に勝とうが負けようが、見ていた人からこんな風に思われる人間になりたいですね。不器用だけど真面目であり、真摯で素直で正直であり、頑張り屋である。僕にとっての新たなヒーロー像となっているエーちゃんに興味を持ってくれた方は、そのまま180℃ターンして書店へ向かうか、amazonのページを開くといいと思いますw
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